DNA鑑定の結果は、赤井の刑事としての勘を裏切って、遥香の母親渕上小百合であることを裏付けた。

それは、あの現場で見たのが、本当に17年前の渕上小百合だったということだった。

三田村はともかく、赤井にはかなりの衝撃だった。

だとすれば、この事件は、本当に警察が調べて分かるモノではないと思った。


DNA鑑定の結果を受け、17年前の失踪も殺人事件の可能性が浮上し洗い直すことになったが、今更何かの証拠が見つかる可能性はなかった。

渕上遥香とその父は、その失踪の頃から今も狛江市に住んでいた。

殺人現場と近いことは近いが、普通に埋葬されたのではない以上、あの頭蓋骨が一体どこにあったのかが問題だった。

そのことは、身元が判明しても、事件解決へ何の進展をも生まないということでもあった。



「とりあえず、この仏さんの旦那にも当時の事を聞いてこい」

真田は、赤井達に指示した。

「おい、三田村。その旦那の勤め先は分かるか?」

「あ、はい。遥香ちゃんに聞きましたので」

「遥香ちゃん?」

三田村のその言い方に赤井は少し睨んだ。

「あ、すみません」

三田村は悪びれる風でもなく、照れ笑いをしながら言った。

確かに、身長も女性として高くもなく低くもなく、肩まで掛かる少し茶色掛かった黒髪で、中々可愛い娘さんではあった。

三田村の趣味という事だろう。

「で!どこだよ!」

三田村がまだニヤけてるので、少し怒ったように赤井が言った。

「はい、えっと東都新聞ですね」

「東都新聞?」

「はい。どうかしました?」

「東都新聞で渕上?…まさか」

「え?知ってるんですか?」

「知ってる奴じゃなきゃいいけどな」

赤井はそう言いながら、照り付ける太陽が待ち受ける窓の外を見つめた。

そして、ふと思った。

もしかして、そういうことか…と。