似顔絵とは言うが、実際はCG(コンピューターグラフィックス)で作成するので、その日のうちに、赤井達3人の証言の似顔絵が別々に出来上がった。

「ほお…」

管理官の真田が唸るほど、3人が見た女性は似ていた。

誰が見てもほぼ同一人物だった。

「わかった。じゃあ、今度は3人で確認しながら、一番似てるやつを選べ」

「え?どういうことですか?」

三田村が訳が分からず聞いた。

「まさか、それ公開するんですか?」

赤井はその意味を感じ取って聞いた。

「ああ、公開する」

真田はさも当たり前の様に言った。

「犯人を刺激しませんか?この犯人はきっと注目を集めたがっています」

赤井が言いたいことは、真田も分かっている。

赤井の言うとおり、この犯人は注目を集めたがっているのだろう。

そうでなければ、あんな細工はしない。

だが、まだ警察発表では、ただ「首が切断された殺人事件」とだけ発表しているのだ。

それだけでも犯人を刺激しているのに、一見写真に見えるように加工される似顔絵の発表は自分の仕掛けが失敗したと警察が言っている様なものだ。

そうなれば、犯人は同様の殺人を更に犯す可能性が高まる。

「お前の心配も分かるが、この似顔絵から何かの情報を得られるかもしれない」

赤井は真田の台詞に、彼の思い描く方針を想像した。

確かに、仮定の上では、こんな犯人だ。

どうせすぐに次の犠牲者が出るだろう。

それなのに、これからも頭も身体も身元が分かりそうにない。

まずは、身元を特定しないことには、何の手掛かりもないのだ。

ただ、心の中では、

「そんなことは無駄だ」

と、思っている赤井だった。