「今の所は俺もそう思う」

その真田の答えに、赤井だけでなく、他の捜査員達も少し騒ついた。

彼らが頭蓋骨でなく『顔』を見たのが前提だったからだ。

「管理官!所轄のあんな報告を鵜呑みにするんですか!」

捜査一課の若い課員が声を荒げた。

あの頭蓋骨からは、洗った形跡がないのに、複顔に使われるはずの化学物質や、ましてや土でさえ付着していなかったのだ。

それは、最初から「頭蓋骨」であり、死んでから埋められずにどこかで保管されていた物と考えられたからだ。

「じゃあ、なんだ?あの仏さんをどうやって血が出ない様に殺した?どうやって血が出ないままの仏さんにできた?さらにどうやって運んだ?なぜ3人の警官が同じ報告をした?幻覚でも見せたのか?じゃあ、どうやった?1つくらい答えられるか?」

「いや、それはまだ…」

逆に聞かれて、その課員は答えに詰まった。

「まだ方向性を決められるほど事実関係がわかっちゃいない。だから可能性は全部潰せ。池田」

そう言って、真田は鋭い視線をその課員に向けた。

「…すみません」

池田と呼ばれた若い課員は頭を下げた。

「試しに、お前達が見たというその女性の顔の似顔絵を3人が別々に描いてもらってみろ」

真田は赤井に視線を戻して言った。

「…分かりました」

赤井はその真田の視線に何かを感じ取って、少し姿勢を正し礼をすると、座った。

三田村も慌てて礼をして座ったのだった。

その後、真田は、赤井が言った内容のことを裏付ける捜査と、過去の同様の事件の洗い出し、そして、今回切断されたばかりの首の捜索を各担当に指示した。