「郁ちゃん!
今のおっきかったね!」
央生は隣ではしゃいでいる。
「うん。
・・・・・・綺麗だったね。」
今、央生が見つけてくれた穴場の草原で花火を見ている。
繋いだ手をそのままに。
「央生、はしゃぎすぎだよ。」
さっきから手をブンブンと振っている央生。
痛くはないけど、振動が。
「だって、郁ちゃんと初めて見る花火綺麗なんだもん!」
そう言って微笑む、央生。
央生、もう混んでないよ。
私、迷わないよ。
手、離してもいいんだよ。
なんて、本当は離して欲しくない。
央生はそれを気付いてくれたんだよね?
キミの好きなところ。
私の言葉にしない気持ちを気付いてくれるところ。
それを叶えてくれるところ。
キミの好きなところ。
1、言葉にしない優しさで私を心配してくれるところ。
2、いつも自分は二の次で私を一番に考えてくれてるところ。
3、時々、過剰になるくらい私を深く想ってくれてるところ。
4、私の言葉にしない気持ちに気付いて、それを叶えてくれるところ。
だけど、一番キミの好きなところ、挙げるとしたら。
『郁ちゃん!おはようー!』
『お待たせ!郁ちゃん!』
『郁ちゃん!帰ろ!』
『郁ちゃん。大丈夫?』
『また明日!郁ちゃん!』
『郁ちゃん、どういうこと・・・?』
『郁ちゃん!ごめんってー!』
『郁ちゃん・・・大好きだよ。』
いつでも、どんなときでも私の名前を呼んでくれるところ。
怒ってたって、何もなくたって決まって『郁ちゃん』って呼んでくれる。
そんな何気ない事が好きなんだ。
挙げるなら他にも沢山ある。
優しい顔で微笑んでくれるところも、愛しそうに私を見つめる瞳も、細いように見えていつも私を力強く包む体も。
好きなんだ。
まぁ、まとめるなら私はキミの、央生の全部が好きってことだよ。
他の人には分からなくてもいいけどね。
「郁ちゃん、入るよ?」
その声の後に控え室の扉が開く音がする。
「うわぁ、綺麗だよ!郁ちゃん!」
白いタキシードを着た央生が純白のドレスを着た私を見て声を漏らす。
「ありがとう。
央生も格好いいよ。」
珍しく褒める私に央生は照れくさそうだ。
そう、今日は私と央生の結婚式。
ついにここまで来たが、前日の昨日にも
『アイツのどこが好きなの?』と言われた。
でも、皆がどう思おうが私は央生が大好きだ。
「あ、郁ちゃん!時間だ!行こう!」
そう言って、私に手を差し出す央生。
ほら今日もキミが私の好きな声で私の名前を呼んでくれる。
きっと、この先私は怒ったり泣いたりしてもそれさえ幸せに感じるだろう。
だって、その時隣にはきっとキミがいるから。
END