それを言うと、父は静かに僕の目を見て、言い放った。

「お前には、人の感情なんていらないんだ。ただ私が言う通りに人生を進めばいいんだ。
あの、お前の汚れた母親のようにはさせない。
だから、お前にとってどちらかを捨てさせることにした。」

そう言った。ホントに頭がいかれているんだと思う。
僕の母親は、だからこの父親から逃げたのだろう。

「そして、今この瞬間にお前の婚約者も決めた。私と仲の良い財閥のお嬢さんだ。
お前と歳は同じだ。だから、もうお前に選択権はない。」


「……。意味がわかりません。
僕は貴方の道具ですか?もし、僕がその貴方の決めた婚約者と結婚すれば貴方は奏になにも危害を加えないですか?」

「あぁ…もちろんだ。
川越さんは才能の塊だ。あの子に危害を加えるのは私としても嫌だからね。じゃ、それだけだ。」


僕は、その言葉を聞いてこの部屋から早く出ていき、自分の作詞作曲する部屋に籠った。

そして、ベッドに身を投げだしてひたすら自分の惨めさを感じた。

そして、気づけば大声で叫んで泣きわめいていた。

喚き散らしてもどうすることもできないこと感情。
なぜ僕は、生きているんだ。
こんな、自分なら要らない。

奏が、いない僕などもう意味のわからないものじゃないか。