華にとって俺はずっとお兄ちゃんだった。


今はもうほとんどただの先生と生徒の関係に戻りつつある。

俺が華を好きなことだけを除いて。


そんな立場の人間が、華の人生に口出しする余地もなかった。


「、、そっか、よかったな」

俺は心と真逆の言葉を吐かざるを得なかった。


「先生もよかったね」

華は整った顔を少しも動かさずに言った。

「、、なにが?」

「松本先生と付き合ってるんでしょ」


驚いた。

確かにあれから松本先生とは何回か飲みに行った。

毎回家まで送った。

でも付き合ったり、恋人同士がするようなことはしなかった。


、、俺からは。


「なにそれ。どこからの情報?付き合ってないよ」

「みんな噂してるよ」


「噂だろ」


華の可愛い顔はどんどん下を向き始め、とうとうあの日のことを言い出した。


「梨花とキスしたくせに」