「今の時点ではわかりません。が、SPO2……血中酸素濃度が減少しており、血圧も平均より低い。何より、意識がなかなか戻らないのが心配です」

「じゃあ……」

「脳はMRIで異常が見つからなかったので、明日から内視鏡で臓器の中を見てみましょう。もしかしたら、写真に写らない臓器の裏側で出血が起きているかもしれない。けれど、その場合吐血や下血があるはずですがそれもないということで……とにかく、明日医局でカンファレンスをします」


先生の話に、不安が増していく。なにそれ。色々検査しといて、結局原因がわからないの? そんなことってあるの?

明日になったら循環器、呼吸器、消化器、脳外科……あらゆる科の先生が朔のデータを見て、どういう治療方針でいくか話し合ってくれるらしい。

とにかく今は水分と栄養補給目的の点滴と酸素マスクをして、様子を見るしかないみたい。


「今夜は私が付き添うわ。お父さんと瑠奈は仕事と学校があるからそっちに行ってちょうだい」

「無理しなくていいよ、ママ。俺が付き添うよ」


お父さんがお母さんを気遣う。けれどお母さんは首を横に振った。


「朔はきっと大丈夫よ。だから、いつも通りにしましょう」