「朔ね、コンビニから帰ってきて急に倒れたの」

「急に?」

「そう。いきなり苦しそうにしてね。若い人でも心筋梗塞でぽっくり逝っちゃう人っているでしょ。私はもう心配で心配で」


なにそれ……。車に轢かれたとか、不審者に刺されたとかじゃなくて、いきなり家で倒れたの? それって、一番怖くない?


「で、原因は?」

「その説明は家族が集まってからするって。私たちがいない間に、CTだかMRIだか撮ったり、血液検査したり、色々してるみたい」


CTってなんだっけ。レントゲンの大げさなやつだっけ。違うか。だんだんと頭が混乱してくる。事の重大さが今頃になってわかってきた。

エレベーターはすぐに目的地の三階に着いた。お母さんと一緒に、救急病棟に向かう。そこは誰でも自由に出入りできる一般病棟とは違い、入り口に鍵がかかっていた。壁についているインターホンでお母さんが名乗ると、ジーと電子音がして鍵が開いた。


「どうぞ」


中に入ると、ネイビーのスクラブに白いパンツを履いた看護師さんが私たちを案内してくれる。救急病棟は一つの大きな部屋で、全部で二十台ほどのベッドが置かれていた。それぞれはカーテンで仕切れるようになっている。