「……何撮ってたの」
「ん? 妖精さん」
そんなわけないでしょ。もちろん本気ではないらしく、口元がにやにやと笑っている。
「見せてよ」
「ダメ。ひとの携帯勝手に見るな」
「無断撮影するひとに言われたくないんだけど」
口半開きでぼーっとしていた顔を撮られたかもしれないと思うと落ち着かない。絶世の美少女ならまだしも、十人並みの私なんか撮って、いったい何が面白いのか。
「もう……」
なかなか貸してくれそうにないので、結局あきらめた。
「そろそろ帰るか。暗くなるとおばさんが心配するだろ」
まるで小学生に言うようなセリフ。携帯の画面を見たら、まだ午後五時。全然大丈夫なのに。
まだ帰りたくない。ずっとこの夕焼けに照らされたコスモス畑を見ていたい。隣に座っていたいよ。何も話さなくてもいいから。
だって、この夢がいつ終わってしまうかわからないんだよ。目を覚ましたら、こんな風に過ごすことは出来なくなる。そう思ったら辛くて、胸が痛くて涙が出そうになった。
「歩いたから疲れたろ。家までおぶってやろうか」
私がうつむいたから疲れたと思ったのか、想史はそんな優しいことを言う。