「……瑠奈?」
顔をのぞきこまれる。近すぎる距離に、どきりとした。
「瑠奈、昔の話をするとき、たまにそういう顔する」
「え? そういうって、どんな顔してる?」
「すごく寂しそうな顔」
なにそれ。まさか私、朔がいなくて寂しいとか思ってるの? ありえない。そんなこと、あり得ないんだから。
「気のせいだよ」
強いて言えば、朔の部分が削れたことで、私と想史の思い出の色がちょっと薄くなっちゃったような感じが寂しいだけ。
「そっか。それならいいけど」
想史の言葉はそこで途切れた。黙って手を繋いで歩き、手頃な石を見つけるとそこに腰を下ろした。
そこでサッカーの話をしたりして、気づいたら日が傾きかけていた。オレンジの光が川やコスモスを照らし、何とも言えない色合いに染めていく。
「きれーい……」
携帯を出して写真を撮る。けれど、肉眼で見ているように綺麗に撮れなくて、すぐに諦めた。花火と一緒だ。心で感じる一瞬のきらめきを素人がそのまま写真に残せるわけがない。
手を下ろしてぼーっと景色を見ていると、すぐ隣でシャッター音がした。振り返ると、想史が私に携帯を向けていた。