「そのときから、瑠奈は優しくて素敵な女の子だって思ってた」

「えっ……」


目を丸くした私から視線を逸らし、想史は恥ずかしそうに笑いながら頭をかいた。


「ほら、キモイだろ」

「そ、そんなことない! 嬉しいよ」


その頃の私はまだ純粋で怖いものを知らなくて、だから優しくいられていたのかも。今はずるいことばかり考えて、嫌なことから逃げてばかりで……想史の思う『素敵な女の子』とはかけ離れてしまっている気がする。ちょっと罪悪感。


「そうそう、ここさ、実は瑠奈も過去に来たことがあるんだ。まだ思い出さない?」

「うそ?」


無理やりに話題を変えるように、想史がそんなことを言う。この場所に、過去に来たことがある? そうだっけ。全然思い出せない。


「保育園の遠足」


そう言われて、ふっと頭の中に浮かんだのは、自分を囲む緑の茎。ピンクの花は頭の上にあった。迷路みたいな道を、先生について一列に並んで歩いた。