「あっちから降りられるんだ。行こう」

「えっ、えっ?」


そう言うと想史は私の手を引き、川と並行になった狭い道に入る。車一台やっと通れるかどうかの道から河原に降りられる石の階段があった。それはガードレールとガードレールの狭い間から草に埋もれるようにして河原へ続いていた。

想史の手を頼りに、転ばないように注意して河原へ降りる。そこは本当にコスモスや他の野草で埋まっている。

バーベキューができるような開けた場所も近くにないためか、とても静かだ。音と言えばたまに橋の上を通っていく車の音が、遠いところで聞こえるくらい。

コスモスは腰の高さまである。誰が作ったのかその真ん中に細い道みたいなものができていた。私はあまりにすごい光景に見入って立ち尽くす。

使い古された言葉だけど、本当に花の絨毯みたい。しかも、終わりかけだけど端っこにヒマワリがまだちらほら残っていて、夢のコラボまで実現している。


「よくこんなところ知ってるね」


濃い赤や白の花も素敵だけど、中心が淡い赤に染まったピンクのコスモスが一番可愛い。うっかり一輪摘み取ってしまいたくなる。けど、家に帰りつくまでに水分を失って萎れてしまうことは目に見えているので、伸ばしかけた手を引っ込めた。