「うまかった。俺、白いもの好きなんだよね」


ご満悦な顔の想史と並んで歩く。その方向は家とは逆方向。学校の生徒たちもあまり行かないであろう田んぼばかりが並ぶ方だ。こんな方になにかあったっけ。


「白いもの……お餅とか? 大根とか?」

「そう。あと、瑠奈とか」


不意に名前を呼ばれてボッと顔から火が出そうになる。たしかに私は産まれた時から肌が白かったけど、そんな風にさらっと言われると照れる。


「何言ってんの」


想史の左腕を叩く。するとその手を右手でつかまれてしまった。


「手は、こっち。もう誰もいないから平気だろ」


導かれた手は、左手に渡されてきゅっと握られる。それだけでくらりと脳が揺れた。幸せすぎて、頭の中が変になってるみたい。

二十分ほど歩き、ローファーを履いていた足が痛くなってきたとき、想史が足を速めた。目の前には、小さな川にかかる橋が。


「ほら、見て」

「うわあ……」


想史に手を引かれて橋の上で下の河原を見ると、そこにはピンク、赤、白のコスモスが両岸に咲き乱れていた。

学校からそんなに離れてないけど、こんな場所があるなんて知らなかった。考えてみれば中学も小学校も逆方向で、こちらに来たことはほとんどなかったかも。