そんな懐かしい景色を思い出すと、頬が緩む。しかし、目の前の練習に意識が戻ると、急に緊張した。いつの間にか、想史の目の前にボールが飛んで来ていた。

想史と近くにいた敵チーム二人、あわせて三人が空に弧を描いて落ちてくるボールを目指してグラウンドを蹴る。すさまじい砂埃を巻き上げ、三人の体が浮いた。

見ているこっちの鼓動が早くなる。誰よりも高く飛んだのは想史だった。まるで、背中に羽根が生えているみたい。額でボールをとらえた彼は、どこをどう見ているのか。後方にいた味方の方へそれを飛ばす。

着地すると、他の二人が分かれ、ひとりがボールを持っている方へ。ひとりが想史のマークにつく。大きな体で押し合う姿にハラハラしていると、想史がぴゅっとマークを抜いて前に出た。嘘でしょ。今、どうやってやったの。魔法みたい。

すかさず味方が想史にパスする。想史はそのボールを思い切り後方に振り上げた足で、蹴った。

ドンと重い音がしてボールが飛ぶ。それはキーパーの指に少し触れたけど、そのまま阻止されることなく、ゴールの右上に突き刺さった。