それからも、楽しい夢は続いた。褒められたことで『私、実は頭悪くないのかも』という暗示が自分にかかったのか、授業が楽しくなった。
学校の誰も、私と朔を比べる人はいない。友達も朔の彼女じゃないから、なんだって言いたい放題。やっと完全に心を開けた気がする。
お小遣いも増えた。両親の私への関心も高くなった。お弁当のおかずも、誰に見られてもいいくらい充実している。
なんと言っても一番最高なのは、愛されている実感!
両親も穂香も、朔中心で世界が回ってた。私はいつもあいつの陰に隠れたおまけだった。だけど、今は直接私を見て、接してくれている。
想史だってそう。朔のついでにしてくれていた挨拶を直接私にしてくれる。スポーツの話題だけじゃなく、私が興味のありそうな話題も振ってくれる。私だけを、見てくれている。
ただ、不満なのは……。
「どうして運動部って、土日も部活するわけ?」
私はグランドの周りのフェンスをにぎり、涙を飲んだ。
朔がいないこの世界で、六日目の朝。想史と両想いになって初めての日曜日。よって今日こそ初デートだ! と、思っていたのに……。