「そうそう、今月のお小遣い。だいぶ遅くなっちゃったけど、はい」


お母さんが差し出したのは、一万円札だった。びっくりして二度見する。


「うそ。こんなにもらっていいの?」


いつもお小遣いは、朔も私もひと月五千円だったのに。携帯代は親が払ってくれていて、お昼はお弁当を持たせてくれる。学校で使うものや衣服も一緒に買い物に行けば安いものなら買ってもらえる。にしても少ないよねと思っていた金額が、突然倍に膨れあがった。


「いつもと同じでしょ。そんなに喜んでもらえて嬉しいわ」


これじゃ、ブランド物の小物や服は買えない。けど、今まで五千円とたまに会うおばあちゃんからの臨時収入でやりくりしていた私にとって、一万円は十分すぎる額だ。

そっか、こっちでは私ひとりしか子供がいないからだ。貧乏でもないけど決して裕福でもないうちは、子供に割ける金額が決まっている。それを朔と私で折半したらお小遣いが五千円になってしまうというわけだ。

朔がサッカー部にいるおかげで、ユニフォーム代とか、すぐボロボロになっちゃうスパイクとか靴下とかスネ当てとか遠征費用とか、そっちにけっこうお金がかかってたもんね。