「それを言ったら、私も気持ち悪いやつじゃない」

「ああ……はは。そうだな」


私たちは、顔を見合わせて笑った。走ってきたせいでお互いに汗だくで、しかも髪の毛もぐちゃぐちゃになっていることに気づいて、また笑った。笑いながら、想史の長い指が私の前髪を直してくれる。


「じゃあ、今日からは彼氏彼女として……よろしくな、瑠奈」


差し出された手を握る。温かい手のひらは、小さい頃よりも厚く、大きくなっていた。

ああ、なんて素敵な夢。想史と両想いなんて。想史が私を見てくれている。手を繋いで、並んで歩ける。その相手が自分だなんて。

現実は残酷で、いつも私をガッカリさせる。私の人生であって、その主役は私じゃない。こっちが現実なら、どんなに楽しい毎日だったろう。

その日、暗くなるまで私は想史と一緒にいた。眠りにつく前、このまま目が覚めないでと何度も祈った。