やだ。夢の中でまで、想史が他の女の子と付き合うのを見なきゃいけないなんて。
そうだ、ここは夢の中。遠慮してる場合じゃない。
ぐっと拳をにぎり、ありったけの勇気を出して彼らの真ん中に出た。
「ちょっと待ったぁ!」
想史が目をまん丸くする。マネさんもぽかんと口を開け、その取り巻きは邪魔するなと言わんばかりにこちらをにらむ。けど、逃げたりするもんか。現実では絶対にできないけど、夢の中だもん。ここだけでも、思うように生きたい。他人に遠慮なんてしないで。自分のために。
「私も、想史が好き。ずっと昔から好きだったの」
ずっと言いたくて言えずにいた言葉を発したら、一緒に涙も出そうになった。
言っちゃった。ついに言っちゃった。言ってしまってから、止まりそうになっていた心臓が激しく動き出す。
「……困った」
眉を寄せて、口元に手をあてる想史。
「ごめん……ええと、南校のひと。俺、あなたとは付き合えない」
「ええ?」
「どうしてっ」
「ひどい」
マネさん自身は涙目で何も言えないみたい。代わりに取り巻きが想史に噛みつくように言う。でも想史は、怯む様子はない。