「テスト返ってきただろ。どうだった?」

「んー、可もなく不可もなし」


本当は数学だけ赤点ぎりぎりだったけど、敢えて言わなかった。そんな話をしながら校門を抜けたとき。


「あのっ、羽野くん!」


想史の苗字を呼ぶ、可愛らしい高い声。その声がした方を向くと、校門の脇に四人の女の子が。その中心にいた女の子を見て、どきりとした。驚いたなんてもんじゃない。心臓が止まりそうになった。それは、昨日現実で見た、想史の彼女だったから。

たしか、他の高校のサッカー部のマネさんだっけ。練習試合で想史を見初めてあっちから告白してきてって……私は見てなかったけど、まさにこういう流れだったわけね。


「誰?」


戸惑う想史の前に、マネさんが一歩出る。そして、私の方は見ずに、想史にだけ話しかけた。


「この前の練習試合で話したの覚えてない?」

「ああ……南校の。で、なに?」


冷たいとも思える想史の反応。こっちの方がドキドキしてるみたい。


「あの……好きです! 付き合ってください!」


周りの女の子に背中を押され、マネさんは思い切ったように大きな声で言った。近くを通っていた生徒が何事かと振り返っている。