たわいない会話をしながら、想史とふたりきりで登校するというかけがえのない時間を過ごしながら学校へ着いた。

朔のクラスで朔の下駄箱を探してみるけど、やっぱり見つからない。想史と別れて教室に入ると、穂香が一限目の英語の予習をしていた。


「おはよう、穂香」

「あーおはよう」


穂香はこっちに笑顔を見せるけど、すぐ予習に戻ってしまう。必死か。私も予習してないけど。

そうだ、朔の彼女である穂香も、朔のこと覚えてないのかな。覚えていないって言うと違和感があるけど、他の表現が見つからない。なにしろ、急に煙みたいに消えてしまったんだもん。


「ねえ穂香、朔って知ってる?」

「……フェンス?」


いや、『さく』を英語にしろなんて言ってないし。しかもそれ、『朔』じゃなくて『柵』だし。英語の予習中だから仕方ないのか。


「そうじゃなくて。穂香、朔っていう彼氏いるでしょ。仲良いでしょ」

「は? 私に2年彼氏がいないの知ってて何の冗談? 喧嘩売ってるの?」


ぎっと私をにらむ穂香の顔が般若みたい。綺麗な子が怒ると、そうじゃない人より6倍怖いわ。とにかく、穂香も冗談や嘘を言っているわけじゃなさそう。