「おはよう」


小走りで駆け寄ると、想史はどこか嬉しそうに微笑む。


「おはよう」


ああ、今日もなんて爽やかなんだろう。想史の笑顔でぽわーっと上気してしまう頬を自分で叩く。ぽわーっとしてる場合じゃないってば。

じっと想史の顔を見る。『あれ、今日は朔は?』と相手が言いだすのを少し待った。けど、想史は見つめられて首をかしげる。


「どうかした?」


なにそのリアクション。どうかしてるのは想史でしょ。いつも一緒に学校に行っている朔がいないんだよ。


「あの……変なこと聞いていい?」

「なんだよ朝から」

「朔が昨夜から家にいないの。想史、どこにいるか知らない?」


ストレートに質問をぶつける。けれど想史はますます首をかしげるばかりだった。


「え? ごめん、もう一回聞いていい? 誰が家にいないって?」

「朔だよ。私の双子の兄で、想史の友達で、幼なじみで、同じサッカー部でしょ」

「はあ?」


詳しく説明すると、想史は眉間にシワを寄せてしまった。そしてなぜか、ぐっと私に顔を近づける。もうすぐキスできそうな距離まで。

どきんと胸が高鳴った瞬間、こちっとおでこが小さな音を立てた。目の前に想史の長いまつ毛があって、わけがわからなくなる。