片手に持っていた携帯のロックを解除し、朔の連絡先を呼び出そうとする。けれどどれだけ注意して見ても、朔の電話番号もアドレスも出てこない。SNSの友達登録欄からも全部消えている。
「ええ~っ?」
さすがに気持ち悪くなってきた。誰かが私がいる間にデータを消したとは考えにくい。お母さんたちは機械に弱いから。となると、SNSは朔自身が退会できるとして、アドレス削除はいったい誰が?
サイバー攻撃かもしれん……。くらくらする頭でなんとか一階に降り、お母さんが用意してくれたトーストとサラダを食べて身支度を整える。
「行ってきます」
そそくさと家を出る。早く誰かに会わなくちゃ。家の前の細い道路から、大きな道路脇の歩道に出る。いつものコース。
「あ」
早歩きをしていた私の視線の先、一つ目の角からひょっこりと長い人影が現れた。あのサラサラの髪は想史だ。
そうだ、想史なら何があったのか知っているはずだ。昨日あんなことがあってこっちは一方的に気まずいけど、仕方ない。
知らない綺麗な女の子と手を繋いで歩いていた想史を思い出すと、胸がギュッと締め付けられる。けど、とにかく朔のことはハッキリさせなくちゃ。