携帯のアラームで目が覚める。昨夜は結局よく眠れなかった。公園から帰ってきたら朔がいなくなっていた。そんなのありえない。幻でも見ているのかと思い、とにかく寝ようとむりやりベッドに潜り込んだけど、なかなか眠れなかった。
「ったくもー。朔のせいで寝不足じゃないのよ。どうしてくれるのよ」
ぶつぶつ言いながら着替え、部屋を出る。深呼吸して、すぐ隣の朔の部屋のドアを開けた。しかし。
「うーっそお……」
その光景は昨夜と寸分違わなかった。朔なんていう人間は最初からいなかったように、彼がいた痕跡はどこにも残っていない。
ずんと胸が重くなる。寝不足のせいかもしれない。何が起きているのか全く分からない。漫画とかラノベみたいに、異世界に紛れ込んでしまったとしか……。
「そんなわけないか」
きっと大掛かりなドッキリに違いない。お母さんたちも人が悪いな。学校に行けば誰かが朔のいどころを知っているかも。
そうだ、携帯。こっちから朔にかけてやろう。昨夜のことは許してあげるから、帰ってきなさいって。よく考えたら朔は何も悪くなかったような気がするけど、そう言ってやろう。