全部いつも通り。お母さんの歩き方も、ご飯の味も。街の景色も、月がひとつなのも。 なのにどうして。 朔が、いない。 いなくなったんじゃない。そもそもこの世界には初めから、朔がいない──。 頭がぐらぐらと揺れる。さっきの公園でのできごとを思い出した。だけど、私の身にいったい何が起きたのか、理解する手掛かりにはならなかった。