人生には、モテ期というのが
一生のうちに3回はあるという。
たとえ、どんな人にでも……
犯人は松永、遠足の翌日には、
私に対する勝手なイメージが、
クラス中に蔓延していた。
「おはよう! 横山さん」
一度も話したことのない男子が
突然フレンドリーに声をかけてくる。
私は、ギョッとして
返事に戸惑う。
「あ、はい。そうですね」
爆笑の渦。
なにが面白いのか、私にはさっぱり分からない。
気分が最高に動揺したまま
席に着く。
「今日の髪型、かわいいね」
えっ? いつも通り、何も変わってませんけど!?
真っ赤になって、慌てて頭を抑える。
真っ赤になりたくないけど
赤くなってしまう頬の紅潮を
自力では止められない。
「ほんとだ、横山さんって
男に弱いんだねー」
「だから、それは誤解」
「そうなの?」
激しく肯定
「本当に?」
それで、急に顔を近づけてくるもんだから、
そりゃびっくりする方が普通でしょ!
「きゃあ!」
思わず顔を伏せる。
「なにそれ、かわいー」
笑ってる。みんなが笑ってる。
かわいい? 私が?
本気で??
そうやって、一日中クラスの男子から
ちやほやされるもんだから
もう心臓が持ちません。
「もー、男子、やめてあげなよー」
高梨愛美が止めに入る。
なんだお前、クラスの人気を横取りされて
焼きもちか?
「本気で嫌がってるからね」
クラスの女王の一言で
男子の動きが止まる。
「でしょ?」
…………えーっと、なんて答えよう。
こんな状況、人生で初めてなんだけど。
宿敵愛美の横やりに、
どう返事を返そうか、悩んでいるうちに
あの人が口を開いた。
「横山さんが、もう俺たちと
口きいてくれなくなったら
どうすんだよ」
本日、一番のテロ攻撃
この人にそんなことを言われたら
私は即死する。
「そんなの、嫌だろ?
かわいそうじゃないか」
そのちょっと怒ったような顔も
間違いないイケメンです!!
「ねぇ、横山さんも
ちゃんと嫌だって、言えよ」
今だって、油断すれば
いくらでも顔がにやける状態なのに
そんなの、言えるわけない
この人にかばってもらって
まともに口角が、動くと思えない、
そんなの、言えるわけないじゃない!!
だって、私は、
あなたのその姿を
直視することが出来ないんですから!
私は、みんなに背中を向けて
教室を飛び出した。
もう無理、
一番好きな人に
そんな殺し文句を目の前で吐かれて、
正気を保っていられるほど
自分は強く出来てない。
逃げ込んだ先の校舎の屋上に
紗里奈と真犯人の松永が追いかけてきた。
「もう、みなみ、大丈夫?」
「は? なにが??
大丈夫じゃないに決まってるじゃない!」
紗里奈のため息。
松永まで、申し訳なさそうな顔をしている。
「なんか、ゴメン」
「なにが?」
「なにがって、その……」
松永が、また勝手に勘違いして
一人でまごまごしている。
奴は今、この状況に、全く関係ない。
私が親友紗里奈に
一番最初に確認しなければならない
最も大切なことは、これだ。
「ねぇ、これってモテ期?」
「違うと思う」
「ほんとに?」
「うん、ただ単に
からかわれてるだけ」
盛大に安堵のため息をもらす。
「よかった。
これが人生で3回しかないモテ期だったら
すっごい損した気分だし
一回分のモテ期を無駄にしてたわ」
「よかったね」
「いやー、マジでさぁ、
別に男が苦手ってわけじゃないけどさー
やっぱ男子としゃべるってなると、
こっちも色々構えるでしょ?」
「なんか変なこと言っちゃいかんとかさー
それこそ、変な男に勘違いされないように
言い回しとかさー」
「そういう気遣いを全部通り越して
あーだこーだと気楽に声をかけられても
あんたたちには、こっちの……」
安心したおかげですっかり気がゆるみ、
唯一の理解者、紗里奈に延々と語っていたところで、
この場に松永がいたことを、すっかり忘れていた。
「横山さんって、
そういうキャラだったんだ」
あ、まだいたんだ、お前
「しーっ」
紗里奈が、伸ばした人差し指を口元にあてて
声を出した。
「しーっ」
ここは、私も乗っかっておこう。
「あ、内緒ね」
松永も、たてた人差し指を口元にあてたから
これで契約は成立だ。
まったく、心臓がいくつあっても
足りません。
一生のうちに3回はあるという。
たとえ、どんな人にでも……
犯人は松永、遠足の翌日には、
私に対する勝手なイメージが、
クラス中に蔓延していた。
「おはよう! 横山さん」
一度も話したことのない男子が
突然フレンドリーに声をかけてくる。
私は、ギョッとして
返事に戸惑う。
「あ、はい。そうですね」
爆笑の渦。
なにが面白いのか、私にはさっぱり分からない。
気分が最高に動揺したまま
席に着く。
「今日の髪型、かわいいね」
えっ? いつも通り、何も変わってませんけど!?
真っ赤になって、慌てて頭を抑える。
真っ赤になりたくないけど
赤くなってしまう頬の紅潮を
自力では止められない。
「ほんとだ、横山さんって
男に弱いんだねー」
「だから、それは誤解」
「そうなの?」
激しく肯定
「本当に?」
それで、急に顔を近づけてくるもんだから、
そりゃびっくりする方が普通でしょ!
「きゃあ!」
思わず顔を伏せる。
「なにそれ、かわいー」
笑ってる。みんなが笑ってる。
かわいい? 私が?
本気で??
そうやって、一日中クラスの男子から
ちやほやされるもんだから
もう心臓が持ちません。
「もー、男子、やめてあげなよー」
高梨愛美が止めに入る。
なんだお前、クラスの人気を横取りされて
焼きもちか?
「本気で嫌がってるからね」
クラスの女王の一言で
男子の動きが止まる。
「でしょ?」
…………えーっと、なんて答えよう。
こんな状況、人生で初めてなんだけど。
宿敵愛美の横やりに、
どう返事を返そうか、悩んでいるうちに
あの人が口を開いた。
「横山さんが、もう俺たちと
口きいてくれなくなったら
どうすんだよ」
本日、一番のテロ攻撃
この人にそんなことを言われたら
私は即死する。
「そんなの、嫌だろ?
かわいそうじゃないか」
そのちょっと怒ったような顔も
間違いないイケメンです!!
「ねぇ、横山さんも
ちゃんと嫌だって、言えよ」
今だって、油断すれば
いくらでも顔がにやける状態なのに
そんなの、言えるわけない
この人にかばってもらって
まともに口角が、動くと思えない、
そんなの、言えるわけないじゃない!!
だって、私は、
あなたのその姿を
直視することが出来ないんですから!
私は、みんなに背中を向けて
教室を飛び出した。
もう無理、
一番好きな人に
そんな殺し文句を目の前で吐かれて、
正気を保っていられるほど
自分は強く出来てない。
逃げ込んだ先の校舎の屋上に
紗里奈と真犯人の松永が追いかけてきた。
「もう、みなみ、大丈夫?」
「は? なにが??
大丈夫じゃないに決まってるじゃない!」
紗里奈のため息。
松永まで、申し訳なさそうな顔をしている。
「なんか、ゴメン」
「なにが?」
「なにがって、その……」
松永が、また勝手に勘違いして
一人でまごまごしている。
奴は今、この状況に、全く関係ない。
私が親友紗里奈に
一番最初に確認しなければならない
最も大切なことは、これだ。
「ねぇ、これってモテ期?」
「違うと思う」
「ほんとに?」
「うん、ただ単に
からかわれてるだけ」
盛大に安堵のため息をもらす。
「よかった。
これが人生で3回しかないモテ期だったら
すっごい損した気分だし
一回分のモテ期を無駄にしてたわ」
「よかったね」
「いやー、マジでさぁ、
別に男が苦手ってわけじゃないけどさー
やっぱ男子としゃべるってなると、
こっちも色々構えるでしょ?」
「なんか変なこと言っちゃいかんとかさー
それこそ、変な男に勘違いされないように
言い回しとかさー」
「そういう気遣いを全部通り越して
あーだこーだと気楽に声をかけられても
あんたたちには、こっちの……」
安心したおかげですっかり気がゆるみ、
唯一の理解者、紗里奈に延々と語っていたところで、
この場に松永がいたことを、すっかり忘れていた。
「横山さんって、
そういうキャラだったんだ」
あ、まだいたんだ、お前
「しーっ」
紗里奈が、伸ばした人差し指を口元にあてて
声を出した。
「しーっ」
ここは、私も乗っかっておこう。
「あ、内緒ね」
松永も、たてた人差し指を口元にあてたから
これで契約は成立だ。
まったく、心臓がいくつあっても
足りません。