真っ暗な公園、隣にいるはずの
この人の顔さえ、よく見えない。
ベンチの横に灯された
唯一の外灯だけが、私たちの頼り
「じゃあさ、もし俺がここで
好きだって言ったら、どうする?」
「笑い飛ばす」
「ふ~ん」
この人は、ずっと私に
横顔を向けている。
「なんで?」
「友達だから」
そう答えたら、この人は
自分の体を重そうに持ちあげて
体を向けた。
この人の手が伸びてきて
私の前髪に触れようとするのを
身をそらして距離をとる。
そうさせない、理由がある。
「女の子って、こういうの、
好きじゃないの?」
「相手にも、よる」
じっと見つめるこの人に
私はもう一度念を押す。
「でしょ?」
だって、この人は
私のことが、『好き』じゃない。
「俺のこと、嫌いだったんだ」
「好きだよ」
そう言った私の顔を見て
この人は笑った。
「なにそれ?」
「自分だって、笑い飛ばしてるし!」
「あはは、本当だね」
じゃあ男の子は、女の子の方から迫っていって
体に触れて『好き』とか言ったら、『好き』になるの? って、
そんなこと、冗談でも、今は言えない。
「お前とは、こういうことを言い合える仲で
よかったよ」
好きか嫌いか、
もちろん私は、この人が好き
でも、好きじゃなきゃ友達にはなれないし
友達だったら、好きなのは当たり前
この人にとって
私のことがずっと好きで
こうやってつき合ってもらえるのならば
その違いは、どこにあるんだろう
「私も」
だったらそれで、いいじゃないかと思う
なにも始まらないけど、終わりもない。
『好き』で、一緒にいられるのならば
何が違うっていうんだ。
私は『好き』な人と、ずっと一緒にいたい
一緒にいて、ずっと笑って
毎日が楽しくて、
それで仲良くしていられるのなら
他に、何を望むんだろう
「そろそろ、帰ろっか」
外灯の灯り、一つだけの公園
そう言って、この人が立ち上がった。
私はうれしくなって
「うん」
って、立ち上がる。
2人で帰る、駅までの帰り道。
私たちはずっと並んで、ずっとしゃべって、
ずっと笑っいあって、帰った。