夏休みが明けて、普通に学校が再開した。

普通に。

クラスはいつもと変わらない。
教室もいつもと変わらない。
高梨愛美と、あの人も変わらない。

朝は今まで通り、別々に登校してくる。
駅とか、どっかで待ち合わせしてる
雰囲気も、ない。

大抵は、大希くんの方が、先に教室に来ていて
あとから愛美が入ってくる。
愛美は、入ったらとりあえず
あの人を目で探す。

目が合えば、手を振るし、
気づいてもらえなければ、
そのまま鞄をしまって、
あの人のところに駆け寄る。

いつも、そうだ。

休み時間は、それぞれに過ごしてるけど
昼休み、ご飯が終わったら
愛美はあの人のところへ行く。

そして、しゃべる。

ひたすら、しゃべる。

笑って、笑って、時には、怒ったり、真剣な顔をしたり
あの人が笑うと、愛美も笑って
あの人が横を向くと
愛美は、うつむく。

そういえば私は、
あの人の好きな色も、
好きな食べ物も、
知らなかったな

一言もしゃべらず、動かない酒井地蔵の隣で
ぼーっとしているのが
何も考えなくていいから、好き。

松永くんと、紗里奈もやってくる。
松永は、気楽にしゃべれるし
会話にも困らないから、楽。

紗里奈は、いつも見守ってくれて
助けてくれて、一緒にいてくれるから、
ありがたい。

最近、とゆーか
野外キャンプから帰ってきてから
やたらと松永が話しかけてくる。
特に意味もない、どうでもいい会話。
つまらなくはないけど、特に面白くもなくて
害のない話し。

私は、あの時、
松永くんが紗里奈と一緒に探しに来てくれたことを
なんとなく後ろめたく思っていて
本当は、お礼を言わなくちゃいけないって
分かってるんだけど、
もう一度、あの日の出来事が脳内再生されるのが
嫌だから出来ない。

なにも言わない酒井くんと
なんにも触れない紗里奈と
よくしゃべる松永くんに囲まれて
まだちょっと、居心地が悪いけど
でも、ここにこうしていられるのが
何よりも、安心する。

「ねぇさ、愛美と大希くん
 つきあい始めたんだって!」

きらら、満面の笑みで乱入。

「よかったよね!」

だから私は、誰よりも真っ先に答える。

「よかったね」

みんなが、心配してくれるから
一番に、そう答える。

「ずっと、好きだったんでしょ」

「そうそう」

「愛美ちゃん、よかったね」

そしたら、きららは、
とってもうれしそうな顔をするんだ。

「うん!」

私は、にっこり笑って、
きららの話しを、聞いている。