「だって、やっぱり好きなんじゃないの?」


瑞穂の言葉が私の胸に突き刺さった気がした。



そんなの決まってる。


ずっと、ずっと、好きだった。


どんなに離れても、


他の人と付き合ったとしても、


私の心の中から相葉先生が消える事はなかった。


確かに、再会したばかりの頃は、


『大好きだった、憧れだった人にまた会えた』


…っていう気持ちの方が強かったかもしれない。


だけど、


ずっと心の中でくすぶっていた火種は、いつ大きな炎を上げて燃え始めても不思議ではなくて。


今の私も、やっぱり相葉先生の事が好きなんだって気付いてた。


それでも私はその気持ちに蓋をする事に決めたんだ。


それが自分の為なのだから―…




「好きにならない方がいいと思う…。」

そう、ポツリと答えた私に、


「どうして?」

瑞穂はすぐに聞き返してきた。


「相葉先生はそんなの望んでいないだろうし。」


私がそう答えたのには理由があった。


相葉先生と話していた時、先生が望んでいた幸せは大崎先生と温かい家庭を作り、可愛い子供を授かる事だったんじゃないかと思ったからだ。


『俺は大切なものを何一つ残せなかったんだろうな。』


この言葉はそういう意味だと感じていた。


だから、いくら私が相葉先生を想ったとしても、先生を幸せにする事なんて出来ないから。


私は非力で、隣にいるに相応しくなくって。



だから…


“やっぱり相葉先生を好きになってはいけない”

“好きになってもまた傷つくだけ”


この考えに間違いは無いと思っていたんだ。