――――…

教室長と椎名先生、私の3人は、応接室を出ると、


「では来月から宜しくお願いします。」


そう言って、相葉先生と教頭先生に向かって深々とお辞儀をした。


まだ応接室内にいた相葉先生と教頭先生も、


「こちらの方こそ宜しくお願いします。」

と、私達に向かって頭を下げた後、


「ではお見送りを…。」

そう言って、私達と一緒に出口に向かって歩き出した。


先に歩き出した教室長と椎名先生の後ろに続いていた私の隣に、さりげなく相葉先生が並ぶと、


「来月からよろしくな?」

優しい笑顔を浮かべた相葉先生が、そう言って左隣にいる私を見下ろした。




もう一度この笑顔が見られるなんて、思ってもいなかった。


また並んで廊下を歩く日が訪れるなんて、思ってもいなかった。


本当はこうして再会してからずっと、


相葉先生の笑顔を見る度に涙が出そうだったんだ―…




「こちらの方こそ宜しくお願いします。」

私は目頭が熱くなるのを堪えて、笑顔で相葉先生に会釈をした。


「もう“河原”なんて呼んじゃいけないよな。“河原先生”だもんなぁ。」

「やめて下さい、“河原”でいいですから!」


私が怒ったフリをしながら、ニコニコしている相葉先生に懇願すると、



「良くないだろう?」

「いいんです!」


そう言って、いたずらっぽく笑っている相葉先生に、私はもう一度念を押した。


そんな私達のやり取りを見ていた椎名先生は、


「息ピッタリって感じね。」

そう言って微笑んでいる。


その微笑で、私が相葉先生に恋していた事を気付かれたような気がして、


「相葉先生は、私にとってワープロの師匠ですから!」

と、教師と教え子だった事を強調した。