8年ぶりに再会した相葉先生は38歳。


こんなに時間が経っているのに、顔も体型もシャンとした歩き方も、あの頃とそんなに変わっていない気がした。


私の大好きな相葉先生そのものだったし、

むしろ、あの頃よりも落ち着いた雰囲気が、素敵な大人の男性のように感じた。


あんなに再会を恐れていたのに、私の心は不思議な位、喜びに満ち溢れていた。



それと同時に、


『好きになってはいけない。』


という思いが、心の中で揺れていた。


職員室の入り口で目が合った瞬間から、とても不安定に、とても大きく…。


だけど現実的に相葉先生は結婚している訳だし、恋愛対象として見てはいけない人だ。


今までだって、どんなに素敵な人だとしても、既婚者を恋愛対象としては見てこなかった。


破滅的で有れば有る程、恋にのめり込まない自分に変わったんだって、私は信じている。


同じ事を、しかも同じ相手には繰り返さないって信じているから。



『きっと大丈夫…。』

私はそう、心の中で呟いた。


今後、私は何度もこの言葉を心の中で呟くようになるだろう。


多分、きっと…。




「どうぞこちらへ。」


相葉先生に連れられて、私達は応接室へと案内された。


私達がソファに座ると、大きな木製のテーブルを挟んだ私達の向かいには、相葉先生と教頭先生が座った。


教頭先生も、私が在学中の頃からいる先生だった。


あの頃は社会科の先生だったけれど、どうやら8年という歳月の中で昇進していたらしい。



「これからどうぞ宜しくお願いします。」


そんな風に挨拶をしながら、お互いに名刺を交換して、私達はソファに腰をかけた。



『まさか先生方と名刺交換をするなんて。』


高校を卒業して以来、想像もしていなかった出来事の連続に、私の照れ笑いは止まりそうも無かった。