教室長よりも頭一つ分位、背の高いその人は、


椎名先生と教室長越しに私と目が合うと


一瞬驚いたような顔をした後に、


何か戸惑うような、困惑するような、


“そんなまさか…”とでも言うような表情を浮かべていた。




相葉先生―…




私が今までで一番想い続けてきた人。


ずっと会いたかったけど、反面、会うのが怖いと思った人。


誰よりも深く、深く愛した人―…




間違いなく、その人だった。


私に向かってまっすぐに視線を注いでいる相葉先生を見て、



「お久しぶりです、相葉先生。」


先に声を掛けたのは私の方だった。



「え…。」


相葉先生は自分の想像が確かなのか、未だに確信が持てない様子だ。



「私、この学校の生徒だった河原です。」


そう言って、無理やり作った笑顔のまま、私はお辞儀をした。



「…河原さくなのか…?」


私をまっすぐに見つめる相葉先生に、



「はい、そうです。」

私は小さく頷くと、更ににっこり微笑んだ。



「今回当社から出向する講師です。こちらの学校の卒業生だそうで…どうぞ宜しくお願いします。」


そんな教室長の言葉を聞き終えると、




「…久しぶりだなぁ!元気だったのか?」


相葉先生は私が大好きだった温かい笑顔を、


まるで陽だまりのようなその笑顔を、


優しい言葉を添えて、私に向けてくれたんだ―…