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どれ程の時間が経ったのだろう。

目が覚めたのは、微かに携帯電話の着信音が聞こえたからだった。



「ん…。」


だるそうにベッドから手を伸ばして、会社に持っていったバッグの中を無造作にあさると携帯電話を掴んだ。



「…もしもし…?」

「さく?寝てたの?」


電話は大和からだった。

完全に寝起きの声で電話に出てしまったので、気付かれても仕方がなかった。


「うん、ごめん。寝てた。」


正直にそう答えながら、時刻が気になって壁に掛けられた時計に視線を移すと20時30分を回っていた。



「夕飯は?食べた?」


電話の向こうから、大和が自分の車に乗り込む時のバタンという音が聞こえた。


「ううん、まだ。家に帰ってきたら、すぐ眠たくなっちゃって。」

「そっか。初日だもんな。お疲れ様。」


大和の労わる様な優しい言葉に、


「ありがとう。」

そう言いながら、ようやく私は横になっていた身体を起こした。



「大和もお疲れ様。仕事終わったんでしょう?これから帰るの?」

「うん、これから帰る。時間も遅いしどっか食いに行こうか。出れる?」


私は寝ている間に若干崩れたメイクを鏡で見ながら、


「うん、急いで着替えるね。少し待たせちゃったらごめん。」


そう言って、軽く手で髪の毛を整えてみると、

ゆるくパーマがかかり、背中の半分程まで伸びた私の髪は、ウェーブが崩れて所々絡んでいた。


「10分位で着くから。マンションの下で待ってる。」

「分かった。じゃあ後で。」


私は電話を切った後急いで着替えると、簡単にメイクを直して大和が待つマンションの外に出た。


夜の少しだけひんやりとした空気が心地良く感じた。