椎名先生は笑顔でいるものの、決してふざけているわけではなく、至って本気で言っているという事が伝わってきた。


「自分がそんな仕事に就けるかなんて考えてもいませんでしたが…興味はあります。」


それが私の正直な気持ちだった。


訓練を受けながら沢山の先生方を見ていて、


『なんてカッコイイ仕事だろう。』


そう、何度思ったことか分からない。



「あなたさえ良ければ、うちのスクールで講師としてやってみない?」

「本当にですか!?」


訓練を受けている真っ最中の私に、そんなチャンスが巡ってくるなんて思ってもいなかった。


“パソコン講師”は、訓練を受けていく内に自然と芽生えた憧れで、


その憧れに近付いた喜びで自分が満面の笑みになっている事は、鏡を見なくても分かった。



「あなたは良い笑顔をしているし、人当たりもいいし、Excelも好きでしょう?」


嬉しそうな表情で問い掛けた椎名先生に、



「大好きです!」


私は迷う事無く、そう答えた。


この3ヶ月の間、主に授業の中心になっていたのはExcelだった。


訓練がとても楽しく感じていたのは、このExcelが大好きだったからだろう。



私の返事を聞いて満足げに軽く頷いた椎名先生は、話を続けた。


「既に資格を持っていて、よく出来る人ほど講師の説明は聞かないものだけど、あなたはいつも真剣に聞いて、きちんとノートも取っていたから気になっていたのよ。」


「あ…。」


“真剣に聞いていたのは、授業中は本当に必死だったからなんです。”

という言葉を、言い出せずに飲み込んだ。



「それに、周りの人にも積極的に教えてあげてたわよね。私、その時のあなたの表情でピーンと来たのよ。」


そんな風に見てもらえた事は、素直に嬉しいと思った。


“見ている人は、ちゃんと見ているんだよ”


そんな言葉をよく聞いていたけれど、本当の事なのだと感じた。