“相葉先生が結婚してしまう。”


この事を知ってから、頭の中は相葉先生の事でいっぱいだった。


この日、私はどんな顔をしていただろう。


ちゃんと笑っていたのかな。


いつも通りの私だったのかな。


どうやって過ごしていたのか思い出せない程、すごく、すごく、ショックだった。




『自分の想いを貫いて、相葉先生を大崎先生から奪ってしまう事が出来ないだろうか。』


どんな事をしてでも相葉先生の傍にいたいという気持ちと、


それとは裏腹に、


『どうして相葉先生が選んだ幸せを、祝福してあげられないんだろう。』


そう、自分を責める気持ち。


どちらも私の心を占めていて、何日経っても揺れ続けていた。



祝福してあげようと思える時は、


『今は悲しくても、相葉先生が幸せになれるならこれで良かったんだ。』


と、少しだけ明るい気持ちになれたけれど、



『どうして結婚しちゃうの？』


という、暗くて悲しい気持ちに入ってしまうと、私の気分はどん底まで落ちていく。



本当は苦しかったけれど、家ではいつも通りの私でい続けようと、カラ元気で過ごした。


特に、私が相葉先生を想っていた事をうっすらと気付いていたらしい母には、今の気持ちを知られたくなかったから。



本気で先生に恋をしていたなんて、


卒業して１年経っても、まだ好きでどうしようもないなんて、


恥ずかしくて言えなかった。


母と気軽に恋愛の話が出来る関係だったら、もう少し違っていたのかもしれないけれど、


どうしても私には出来なかったから、いつものように明るく笑い、楽しく話し、元気に仕事に行く。



それを繰り返していた私の心は、


自分でも気付かない内に、


少しずつ、少しずつ…


暗い影に支配されようとしていた―…