「むしろ私の方が何度も待っててもらったし、付き合ってもらったり、相談にのってもらったり、沢山迷惑かけたんだから!」


そう言った私の事を、梢と瑞穂の二人ともじっと見つめている。


そしてしばしの沈黙の後、


「確かにそうだねぇ。」

「色々ありすぎなんだよねぇ。」


と、顔を見合わせた二人がそれぞれに言い始めた。


「泣いてばっかだし。」

「心配かけまくるし。」


二人とも笑いながら、次々にいたずらっぽく続けている。


そんな二人の様子が面白くて、思わずプッと吹き出しながら、


「本当にごめん!でも本当にありがとう!」


と、私もさっきの梢と同じように席に座ったままの状態で、机に顔が付くんじゃないかって程に頭を下げた。


「いいよ別に。お互い様だから!」


そう言った二人は、ニコニコと笑っている。


二人の笑顔を見て、私の気持ちは少しだけ軽くなった。



そして一呼吸置いた後、ちょっとだけ真面目な顔に戻った瑞穂が、


「で…どうすんの?」


と、思い切ったように私に聞いてきた。


分かっている。相葉先生の事だろう。


瑞穂と同じように気にかけていたであろう梢も、


同じように真面目な表情を浮かべて私が口を開くのを待っていた。


「ん…。」


私は自分が考えている事の、どこから話すべきかを一旦頭の中で整理してから口を開いた。


「ずっと先生に謝らなくちゃって思ってたけど、どうしても話がしたくなかったし、顔も見たくないって思ってた。」


話しながら、私は自然と遠くを見つめていた。


これまでに起きた沢山の事が、ゆっくりと頭の中を過ぎっていく。


この2年間で沢山の相葉先生を知ったんだ。


苦しくなる程の優しさも、


人としての温かさも、


私には理解出来なかった、大人の冷静さも―…



「結局謝らないまま、こうして時間が経ってね。ようやく気付いたの。私、やっぱり先生が好きなんだよね。」


視線を二人に戻すと、うん、うんと頷きながら、きちんと私の話を聞いてくれていた。


そんな二人の目を交互に見ながら、私は話を続けた。