ドアを開いた手を止めて、もう一度相葉先生の方を振り返り、


「やっぱり、先生の事を諦めるなんて私には出来ないよ。大好きなんだもん。だから…だから私は、ずっと先生の事が好きだから。やめないから…。」


私は一生懸命に、自分の気持ちを言葉にした。


そんな私の想いを、せめて知っていて欲しかったからだった。



「河原…。」


困ったような表情を浮かべている相葉先生に、



「先生の気持ちが変わる事、私、ずっと待ってる…。」


「…」


私は自分の想いを言い切ると、無言の相葉先生を少しだけ見つめた。


相葉先生は少しだけ悲しい表情をしていて、


『更に困らせたのかもしれない。』


私はそう感じた。



「…どうもありがとうございました。」


私は車を降り、相葉先生に向かってペコリと頭を下げて車のドアを閉めた。



閉まる瞬間、


「どうして生徒なんだよ…。」


微かに、その一言が聞こえた気がした。



「え…っ?」


私が相葉先生に聞き返す間もなく、先生は私に向かって軽く片手を上げると、そのまま走り去っていった。



『私の聞き間違い…?』


私の心に浮かんだ疑問。



そして、


“どうして生徒なんだよ…。”


その微かに聞こえた言葉が頭から離れず、私は立ち尽くしたまま、相葉先生の車が見えなくなるまで見送った。