私は相葉先生から借りたジャージとTシャツを脱いで、制服に着替えた。


制服を着た途端に、私は生徒なのだと思い知らされた気がした。



ジャージとTシャツを畳んで手に持ち、先生がいる部屋に戻ると


「先生、このジャージとTシャツ、洗わせて下さい。」


せっかくお借りしたものだから、と私は申し出たけれど


「いや、いいよ。そんなの気にするな。」


と、相葉先生は私が手にしているジャージとTシャツに手を伸ばした。


「けど…借りたものはちゃんと返したいし…。」


そんな私に相葉先生は穏やかな表情で、


「だけど、返す時に困るだろう?学校に持ってくるのも変だし、今日そんな男物を持ち帰ったら、きっとご両親もビックリするぞ。」


確かに、相葉先生の言う通りかもしれない。


女子校に通う私がメンズのジャージを持って帰るなんて、不自然だった。


そして、そういう事自体が相葉先生にとっては迷惑になるのだと思った…。



「な?だからいいよ。アイロンかけてくれたので十分。ありがとうな。」


そう言って優しく微笑む相葉先生に、


「はい…ありがとうございました…。」


私がそれ以上、自分の気持ちを貫けるはずもなく、


相葉先生が言う通りに、借りていた服を手渡した。



「じゃあ、送るよ。」


上着を羽織り、車の鍵を手にした相葉先生に、


「はい…。コーヒーご馳走様でした。」


そう言って、私は少しだけションボリしながら、ペコリと頭を下げた。


「どう致しまして。」


口元に笑みを浮かべて、先に相葉先生が玄関の方へと歩き出した。



私は寂しい気持ちを抑えながらカーディガンを羽織り、カバンを持つと相葉先生の後ろに続く。


靴下はカバンにしまいこんで、裸足で靴を履いて外に出ると、雨はもう既に止んでいた。