「…お前、どうしてそんなに頑張れるんだ?」


相葉先生こそ、どうしてそんな事を言うんだろうと不思議に思う。


学生なんだから勉強を頑張るなんて当たり前の事だし。


だけど“どうしてそんなに頑張れるのか”と聞かれたら、

それは今後の就職の事とか、間違いなく自分の為ではあるのだけど、

それだけとは言えない部分も十分にあった。


“相葉先生の授業だから頑張ってる”

“相葉先生が好きだから、先生が教えてくれる授業の内容は誰よりも出来る子でいたい”



私の気持ちの半分以上はこんな想いが占めていたけれど、


『言うと、先生に呆れられる。』


そんな考えが頭を過ぎって、結局何にも言えずに、


「うーん…。」

と、首を傾げながら笑ってごまかした。


「…他のやつも少しは見習ったらいいのにな。」


相葉先生はそう言いながら、いたずらっぽく笑った。

もしかしたら先生自身も、


『おかしな事を言ったな。』

と、思ったのかもしれない。


何となくだけど、はぐらかした感じがした。


私はパソコンの電源を切ると、セーラー服の上にカーディガンを羽織って相葉先生と一緒にパソコン教室を出た。


職員室の前で、

「じゃ、気をつけてな!」

そう言って、相葉先生は私に向かって軽く手を振り、


私もいつものように、

「さようなら!」

と、先生に笑顔を向けた。