翌日は最悪な気分だった。

だけどどんなに前日の夜が悩んで眠れなかったとしても、それでもいつも通りの朝が当たり前にやってくる。


この日は簿記の授業がある。


相葉先生の授業を受けられる事が私の喜びで、先生との唯一の繋がりだと思っている。


どこまでも“生徒”でしかいられない自分。


そこから抜け出したいのに、抜け出せない自分。



『この片想いに、幸せな終わりは来るのかな…。』


時々、そんな疑問を感じてしまう事があるけれど、幸せな終わりを迎えられるかなんて検討もつかない事だったし、むしろ、この状況だと絶望的だった。


それでも止められなかったんだ。

どうしようもない位、相葉先生が好きだから―…


簿記の授業を受けている最中、時々先生と目が合った。


先生は授業の中で説明をしながら満遍なく教室内を見ている訳だから、目が合ったって、ちっとも不思議ではないのだけど。


視線がぶつかった瞬間、私の胸は大きく高鳴り、もしかしたら隣の席の子に聞こえたんじゃないかと焦ってしまう程だった。


当然、加奈子の話が頭を過ぎっていたけれど、それでもやっぱり、私を幸せな気持ちにさせていた。


先生の声が好きで

先生の優しい笑顔が好きで

私の頭を撫でる先生の手が好きで

先生の全てから溢れる、穏やかな温もりが大好きで―…


この想いが毎日毎日、少しずつ募っていく。


心の中の加奈子への嫉妬心が消えぬまま、募っていた…。