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『加奈子が少し前に、一人で相葉先生の家に遊びに行ったんだって。』


家に帰ってからも知ちゃんが言った言葉が頭の中を駆け巡っている。


放課後、知ちゃんとしばらく話をした後、校内点検を終えた梢が戻って来たので瑞穂と3人で帰った。


私が衝撃的な事実を知った時、瑞穂は他の友達と話をしていて、知ちゃんが言っていた事は少しも聞いていなかった。


もちろん、梢も知らない出来事だっただろう。


私はどうにもたまらなくて、瑞穂と梢に打ち明けた。


もちろん、こんな話が学校中に広まったり、

相葉先生に迷惑がかかるような事だけは起きて欲しくなかったから、固く口止めをした。



瑞穂と梢も、

「はぁ!?」

そう言って言葉を失った。


驚いたのと、私にかけるべき言葉がみつからなかったのだろう。


その沈黙を破って梢が、


「きっと、相葉先生も困って家に入れてあげるしかなかったんじゃない?夜だし…。」


そう言ってくれたおかげで、私は少しだけ救われた気がした。


「うん、別に加奈子だけが特別って訳ではないような気がする…。」


瑞穂もそう言ってくれた。


例えそれが気休めだったとしても、私にとっては十分癒し、慰める言葉ばかりだった。


そして、


「気にしないで、自分らしくいなさい。」


最後にそう励まされて、私は家に帰ってきたのだった。


励ましてもらったり、慰めてもらったりしたけれど、家に着いてからも心の中の嫉妬心は消える事がなく、一人でいればいる程、考え続けていた。



『加奈子のように思い切った行動が出来たら、どんなにいいだろう。』


そう思ったら、本当はとても羨ましかったんだ。


だけど、


『そんな加奈子の行動を相葉先生はどう思ったんだろう。』


そんな風に双方の立場になって考える程、何も出来なくなってしまう。


ただ、ただ、私は嫉妬に苦しむばかりだった。