知ちゃんにそんな私の気持ちが伝わっていたかどうかは分からないけれど、詳しい事を教えてくれた。


「夜、突然相葉先生に会いたくなってアパートに行ったんだって。そしたら部屋に入れてくれたって言ってた。」

「…一人で？」


“嘘であって欲しい”

そう願いながら、知ちゃんに問い掛けた。


「そう。」

表情を変えず、真っ直ぐに私を見つめて頷いた知ちゃんに、


「…夜に？」

問い掛ける度に心臓をバクバクさせていた私は、


「そう。」

「…嘘だぁ！！」


知ちゃんの変わらない返事が余りにも信じられず、最後には“嘘だ”という心の声をそのまま叫んでいた。


「加奈子が言ってた事だから、もしかしたら嘘かもしれないけれど、多分本当だと思うの。私に嘘をついたって加奈子には何の得もないはずだから。」


確かにそれは、知ちゃんの言う通りだった。


しいて言うなら、知ちゃんを通じてその話を聞いた相葉先生ファンがショックを受ける位だろう。


当然、私はひどく動揺していた。


『夜に一人でやってきた生徒を、そんなに簡単に部屋に入れるのかな…。』

そう、思っていた。


相葉先生は立場上、多少は人の目を気にするだろうし、


恋バナ好きな女の子が多い分、こんな出来事が知れたら、あっという間に学校中に広がってしまう。


しかも相手は自分が顧問を務める部活に所属している加奈子。


相葉先生はそういう事も何も考えずに部屋に入れるのだろうか。


そんなに簡単でオープンな感じの人だったのだろうか…。


それとも…


加奈子が特別なのかな…。


色んな思いが頭の中を駆け巡る中、私はポツリと呟いた。