終業式当日―…


式はあっという間に終わり、


「また来年ね!」

そう、何度も友達同士で言い合いながら、昼頃にはみんなぞろぞろと帰り始めていた。


受け取った通知表の簿記とワープロの評価は5。


他の教科はそっちのけで、この二科目ばかりが気になっていた私にとっては、大満足の結果だった。


「うちらも帰ろっか。」

瑞穂の一言で私達3人も教室を出て、お喋りをしながら廊下を歩き、階段を降りた。


心の中で、


『帰る前に挨拶だけでもいいから相葉先生と話がしたいな…。』

そう、思っていた。


1階のロビーに着くとすぐに、


「ごめん、ちょっとパソコン教室に行ってきてもいいかなぁ?」

と、瑞穂と梢にお願いすると、


「うん。行っておいで。」


そう言って笑顔で手を振る瑞穂と梢に、


「ありがとう、行ってくる!」


私も二人に手を振り返しながら、パソコン教室に向かって走り出した。



パソコン教室に着くとドアの鍵は開いていた。


走ってきたせいで、私の呼吸はハァ、ハァと上がっている。


私はドアの前に立ち止まって自分の呼吸を整えると、準備室のドアをノックした。


「はい。」

「失礼します。」

いつも通りに相葉先生の声が聞こえたので中に入ると、手に数冊の本を持った相葉先生がこちらを振り返り、


「帰るのか?」

と、声をかけてくれた。


ちょうど片付けをしているところだったらしい。


「うん。先生に挨拶してから帰ろうと思って。」


そう言った後、恥ずかしさで私が“へへっ”と笑いながら相葉先生を見ると、先生もつられたように笑っている。


『こんな穏やかな空気が好きだな。』

なんだかすごく嬉しくて、私は更に頬が緩んだ。