「あ…えっと…。」


全く余裕がない状態で、私は必死にバッグの中を手でゴソゴソとかき回す。


「先生にこれを渡そうと思って…。」

「えっ?」


ようやく私が差し出したプレゼントを見て、相葉先生はとても驚いた表情を浮かべた。

そんな先生を見て、私の不安は更に倍増していく。


『やっぱり受け取ってもらえないかもしれない…。』


不安がどんどん心の中で広がりながらも


「今日、先生の誕生日でしょう?おめでとう!」

そう言って、私は精一杯の笑顔を向けた。


「そうだけど、そんなの貰うのは悪いよ…。」

遠慮する相葉先生に、恥ずかしさと不安で頭がクラクラしながらも


「でもっ、先生の為に買ったし!ほら、いつもお世話になってるし、受け取って下さい!」

そう言って、私は尚も必死に差し出した。


「そっか…。どうもありがとう…。」

相葉先生は照れ臭そうにそう言うと、ちゃんと受け取ってくれた。


今まで拒絶されてばかりだった分、受け取ってもらえた事がとっても嬉しくて、


先生の手に渡ったプレゼントを見ていると、十分すぎる位、幸せな気持ちだった。


「こちらこそありがとうございます。先生、本当に誕生日おめでとう。」

「ありがとう。」


相葉先生の笑顔を見て、


『渡して良かった。』

そう、心から感じていた。



「ほら、また見つかったら怒られるぞ。」


私がこの準備室にいた時に、偶然やってきた他の先生に注意されたという出来事を思い出した相葉先生に促され、


「そうだね。先生さようなら。」

私は笑顔で手を振ると、とても幸せな気持ちで準備室を後にした。


後は、もうすぐ訪れるクリスマス。


けれどクリスマスが来るという事は、相葉先生とのしばしのお別れがやってくる事を意味していた。


クリスマスイブは終業式で、そこから長い冬休みが始まるからだ。


けれどこの時ばかりは冬休みの事を忘れて、束の間の幸せな気持ちに浸っていたんだ。