「…よし!」

私はドキドキしながら準備室のドアをノックした。


「はい。」


大好きな相葉先生の声が聞こえて、


『渡せるんだ。』


そう思った私は、最後の最後にようやく巡ってきたチャンスなのだと感じた。



「失礼します。」

「…どうした?」


中に入ると、椅子に座ってタバコを燻らせている相葉先生と目があった。


「相葉先生。」


私は笑顔で呼びかけながら近付くと、恥ずかしさで俯きながら


「あっ、あのね…。」


そう言って顔を赤らめた。


『受け取ってもらえなかったらどうしよう』


そんな不安のせいで、なかなか言葉を出せずに焦り始めた時、


「…検定、どうだった?」

「え?」


先生の言葉に私がパッと顔を上げると、


「うまく出来たか?」

ニコニコしながら、俯く私に相葉先生が話しかけた。


この時の私は必死だったから全く気付いていなかったけれど、

きっと相葉先生は、私の解答がどんな仕上がりだったかを知ってて聞いていたのだろう。


言葉に詰まる私を気遣ったのか、

それとも静まり返る空気になる事を避けたかったのか…

そのどちらが正解かは分からないけれど、話題を作ってくれたのは確かだ。


「う…うん!多分、大丈夫だと思う。先生のお陰です。」


そう言って私が笑顔で頭を下げると、


「あんなに練習頑張ってたもんな!」

「うん!良い結果だったらいいんだけどね。」

「そうだな!…で?何の用事だったんだ?」


相葉先生のその一言で私は再び緊張し始めた。