「…」


私が今まで、こういう二人の姿を見る事がなかったのは、運が良かったんだって心から感じていた。


二人が仲良く一緒にいるところだけは見たくなかったからだ。


相葉先生も大崎先生も、私達の存在に気がついている様子で、しばらくすると二人一緒に準備室を出て、そのまま去っていった。



「さく…。」


心配そうな顔をしている瑞穂に声をかけられて、私はハッとした。


ついこの前フラれて泣いたばかりだし、気遣われても仕方がないと思う。


でも、そんな風に周りに気遣わせてばかりはいられない。


頑張るって決めたのは、他の誰でもなく自分だから。


クヨクヨなんて、していられないんだ。



「大丈夫だよ。ああいう事もあるよ。」


笑顔で答えたのは、私に出来る精一杯の強がりだった。


だけど、尚も不安げな表情を浮かべる瑞穂に、


「さっ。練習しよ!」


そう言って瑞穂よりも先に椅子に座り、パソコンの電源を入れた。


「…そうだね。」


瑞穂はそれ以上何も言わず、私の隣の席に座った。