後1週間もしたら 先輩がこの日本から旅立つ…。どうしょうもないリアルに、何にも出来ない自分がもどかしい。

今日は色部で、圭さんに頼まれた仕事を淡々としていると 広報の須藤さんからメールがあり、カタログが出来上がったと連絡が入った。


「圭さん、この前のカタログが上がったみたいなので、取りに行って来ますね。」

「あら、それは楽しみね。わかったわ。」


エレベーターで広報の部屋に向かう。


「お疲れ様です。開発の安藤ですが、カタログ取りに来ました。」

「あっ///杏果お疲れ。俺に会いに来たのか?」

「違うし…。カタログ取りに来たって聞こえなかった?クスクス…」

「スト~ップ。その顔は誰にも見せちゃダメだって///」

???

「お疲れ様安藤さん。これ持って行って!」

「お疲れ様です。須藤さんありがとうございます。」

「安藤さんの表情が可愛すぎて…小売店で これ誰?って人気が出そうだよ!ねぇ今までスカウトとかなかった?」

「スカウトですか?以前は 世間と後ろ向きの生活をしていたので、そんな世界とは無縁でした。」

「勿体ないねぇ…。そっか、それでか…」


何か考え込む須藤さん?


「須藤さん、杏果が可愛いからって ちょっかい出すのは止めて下さいよ。これ以上は俺も手に負えない状況嫌なんで…」

「お前でも手に負えないとか、安藤さん手強いんだ。ハハ…」

爽やかな顔で笑う須藤さんは、素敵だ。

「こら、じっと男を見るとかダメ…。ほら、こっちに来て…」

「竜野。あんまりサボんなよ…。」

笑いながら須藤さんに声を掛けられる竜野君に腕を引かれて、階段の所に連れて行かれる。

「杏果は可愛いんだから、男に必要以上に話掛けたり笑うのダメ。この意味わかる?」


「意味がわからない。じゃあ今もだめだよね?クスクス…」


「///そうだね。参ったな…気を付けないと…」


急に壁ドンされて、竜野君の腕に囲まれ逃げれない?


「あの、これって噂の壁ドンってやつ?」

「ああ、女の子が逃げれなくてドキドキするやつなんだけど…反対に俺がドキドキするとかヤバい///」

「ありがとう竜野君。私これから男の人に隙を見せない様に気を付けるよ。早く戻って先輩と一緒にカタログ見たいんだ…離してくれる?」

ニコリと杏果に下から覗かれ 竜野は赤い顔で杏果を解放した。全然納得はいかないが、嫌われたくないが故に…悲しい惚れた者が負け。

「じゃあまたね。竜野君…」

「ああ、またな…」


階段をタンタンと降りて行く軽やかな後ろ姿の杏果を、ずっと見つめるだけの竜野だった。