躊躇う石川。
まあ、当然だろう。なにせ、明らかに巨大化しただけの普通の折り鶴である。パタパタするやつですらないのだ。しかし、そこは迷だ。あっけらかんとこう答えた。
「そうだよ~、迷ちゃん特製、新作マジックアイテムの折り紙だよ~。目を書いたら飛ぶから、目を書いてあげてね!」
そう、迷の特製新作マジックアイテム、その名も「不思議な折り紙」は、折ったものに目を書くと、目を書いた人の思い通りに動くという代物だ。
ちなみに、迷はこれで箱を作り、目を書いてゴミ拾いをさせたりしている。
「お、おう」と戸惑いつつ目を書き入れる石川くん。ここに来てから戸惑うことばかりのようだ。まあ、文化の違う場所だからね、仕方ない。
そして、目を書き入れた鶴に、石川くんが乗った。
「で、どうしたらいいんだ?」
「命令してあげて? 飛べ~って。」
気の抜けた説明に、一瞬脱力したあと、小さく呟いた。
「……飛べ」
すると、鶴がふわりと浮き上がり、窓から外へ飛び出した。
「方向も指定してあげてね~!私もあとから追いかけるよ~」
そう迷は声をかける。石川はあっという間に見えなくなってしまった。迷特製の空飛ぶ折り鶴はスピードもなかなかのようだ。
「さて、と。私も行きますかね。」