「でもっ」
「あ?」
「でも、俺の自転車は二人のりできない………」
だから、これには対応できなかった。
そう振り返って見た自転車は、確かに青春乗りできるような荷台はない、本格的な自転車だった。
トホホ…。
さすが、木村くん。
しかし、ここは二人乗りできた方が良かったかな………。
一同がオロオロしている間、黙り込んでしまった石川くんに、木村くんは笑う。
「なんか、ありがと」
その言葉にハッとした。
木村くんから出た、ごめんではなく、ありがとうの言葉。
蛍おばあちゃんは鼻がツンとします。
しかし、無言の石川くんを他所に、木村くんは一人、壁にぶら下がったヘルメットをおもむろにつけた。
倒れた自転車を木村くんが立て直して、またがる。
取り残されたような石川くんに、木村くんが手をあげる。
「じゃ、行ってくるわ」