頷いたはずだった木村くんに、手をはなそうとした石川くんが、最後に付け足されたその言葉で深いため息をつく。



「今度はなんだ?」

そんな石川くんに木村くんは言い訳するように言う。



「だってそれ、結局俺が駄目ってことじゃん?」



「あー、そうかもな」

「だったら___」


「けど、だからこその魔王木村なんだろ?」


驚きの台詞に木村くんは不思議そうに石川くんを見る。目をそらした石川くんはそのまま吐くように言った。



「この国の人たち、みんなお前のこと褒めてたぞ」



“俺も少しだけだけどスゴいと思ったし?”


そう聞こえるか聞こえないか微妙な声で付け足した石川くん。



しかし、木村くんはそんな褒められることに馴れてない。



「あー、でもほら。魔王のこと悪く言える奴いなくね?」

そんな風にしか言えない木村くんに、遂にぶちギレる石川くん。



「だからっ!お前は自己評価低すぎなんだよ!」

そう言って木村くんを掴むと、蛍が開けた窓に、乱暴に木村くんの首をさらす。



「よく見ろっ」

そこには石川くんの見た景色と同じく、広がる城下は豊かで、親切な人で溢れていて、イチゴの花がちょこんと咲いていた。



「こんな景色はな、国王が頑張ってくだらない争いをなくして、国王がそういう平和を好まなきゃ、決して見れないんだよ!バカかお前は」



「バカって………」

「あぁ。何度だって言ってやる。お前はバカだ」

「ひどい」



「ひどくて結構。だから、俺が一緒に行くって言ってやってるんだ。面倒だけどな。ありがたく思いたまえ」




そう言いきった石川くんは、木村くんがこれに頷くと確信していたのだろう。