それを見ていた誉も、ポツリと迷に言った。

 
「なんか、案外なんでもない理由でしたね」
 
「うん、そんなもんだよ~。なんか、師匠って呼ばれるとさ、距離が遠のいちゃう気がしない~?」

 
そんなつぶやきに、迷は笑顔でのほほんと返す。
 
けれど、その答えはなかなかに分かりづらいものだったらしい。

誉はきょとんとして繰り返した。

 
「距離、ですか?」
 
「うん、距離。私は誉ちゃんとなるべく近くの立ち位置で教えたり支えたり?したかったからね。」


相変わらずのニコニコ笑顔の迷は、親友の蛍とその弟子を見ている。
 

「そう、だったんですね。気づかなかったです。」
 
「うん、気づかなくていいんだよ~。」
 

のんびりと笑って見せる迷は、やっぱり何を考えているのか分からない。